【fate槍弓】永遠にここで君を待つ11

タイトル:【fate槍弓】永遠にここで君を待つ11
内容:FGOで『槍ニキが来たら槍弓小説書きます』と呟いたら、次の日に槍ニキが来た記念に、真冬のホラー体験をプレゼント。
四・五次弓騎士が兄弟設定の上、兄馬鹿なギルが居ります。

つづきからお読みください。


◆◆◆

クー・フーリンは地元の高校を出ると、地元を離れて大学へ入りそのまま大学院に進んだ。
元々勉強熱心というわけではなかったが、かといってやりたい仕事があるわけでもない。
大学の恩師に、ルーン文字について学ばないかと声を掛けてもらって、それに乗っかった格好だ。
中学最後の夏休みに経験した出来事は、クーの中で忘れられぬ記憶となった。
光の中へと進んだクーは、気が付いたら病院の白いベッドの上に居た。
驚いて混乱していると、憔悴しきった老夫婦と、泣き腫らした目をした母親と父親が目に飛び込んできた。
クーは数日間、行方不明になっていたらしい。
あの屋敷に居たのは数時間、長くても1日位だと思っていたからとても驚いた。
大きな怪我もなく元気そのものだったクーは、精密検査や警察の聞き取り調査などを受けつつ、数日後には無事に退院した。
そしてその足で衛宮邸を訪れようとしたが、それよりも先にその周辺を局地的に地震が襲い、あの屋敷は土砂の下に埋まってしまった。
瓦礫の撤去や地盤調査などが行われた後、クーはその場所を訪れてみた。
そこは何もない更地になっていた。
瘴気の漂う、廃れた屋敷も。
星のない闇に覆われた、明けない空も。
入った者を切り裂く、悲しい者も。
何もかもすべてがゼロに戻った、真白な場所。
そこで初めて、クーは己の力が無くなっていることに気が付いた。
それからはあり得ないものを見ることもなく、勉学で忙しい日々を送ることになった。
しかし、それでも日常の、ふとした時に、彼らを思い出す。
特に、エミヤの事を、クーは忘れられなかった。
それが恋だと気が付いたのは、高校に入り始めて告白を受けて付き合い始めた時だった。
その時の恋人とはすぐに別れ、それからは誰とも付き合ってはいない。

「邪魔だ、どけ狗」
「誰が狗だ、殴るぞ貴様」
大学構内のカフェテリアでバイトまでの時間を潰していると、いきなり暴言を吐かれた。
手にしていた携帯電話の画面から顔を上げると、そこには金の刺繍が施された赤い布地の華美なナップザックを肩に掛けた金髪の男が立っていた。
同じゼミ仲間のギルガメッシュだ。
クーと同じ血の色の瞳が、不機嫌そうに細められている。
丁度昼時で、学食内は満席に近い込み具合だ。
ギルガメッシュも昼食を取るために、空いている席を探していたのだろう。
クーは隣の席に置いていた荷物を、自身の足元に移動させた。
満足そうに鼻を鳴らしたギルガメッシュは、クーの隣の席に腰かけると、ナップザックから紺色の風呂敷に包まれた物を取り出した。
風呂敷を広げると中から2段重ねになった漆塗りの弁当箱が現れる。
落ち着いた漆黒の蓋を開けると、ギルガメッシュはふわりと目元を緩ませた。
「随分と嬉しそうじゃねぇか。彼女にでも作って貰ったのかよ」
ギルガメッシュがどこかのお嬢様にアタックしているというのは、この大学では有名な話だった。
ついに意中の君を射落としたのかと、興味半分で聞いてみた。
「愚か者め。これは我の弟が我の為に作ってくれたものだ」
予想外の返答が返ってきた。
「お前、弟なんていたのか?」
「居るぞ。自慢の弟だ」
初めて聞いた事実に、俄然興味が湧く。
クーの知るギルガメッシュといえば、優雅独尊、自己中心、崇め称えよ、我こそは王の中の王なるぞ、という人物だ。
そのギルガメッシュが『自慢の弟』だと言い切る人物。一体どんな男だろうか。
「我の弟はな、それはもう愛らしいのだ。愛嬌のある顔立ち、貞淑な佇まい、兄である我を尊敬し敬愛している。少々後ろ向きな所が玉に瑕ではあるが、そこもまた良い」
べた褒めだった。
え、これは、俺の知っている俺様何様王様のギルガメッシュ・アーチャーかと、クーは我が目を疑った。
何か変な物でも食べたのか。あ、いや、これから食べる所か。
「……弟が大好きなんだな、お前」
「当たり前だろう!あのように愛くるしい子を愛さぬ者はおらん!」
「へぇ~、お前にそこまで言わせる奴がいるのか」
クーの言葉に、ギルガメッシュはどこか誇らしげにしている。
それが癪で、クーは視線を逸らし、ギルガメッシュが広げた弁当を見た。
それは素朴だが彩も良い。昔、家庭科で習った5色がきっちりと揃えられた、栄養が考えられたもので、どの総菜も美味しそうに見える。
ギルガメッシュは手を合わせていただきますと言うと、箸を手にそれらを食べ始めた。
1つ口に入れては、優しく微笑み、頷く。
そして咀嚼して飲み込むと、また1つ取り口に入れて、同じように頷く。
「美味いかよ」
ギルガメッシュが口の中の物を飲み込むのを確認してクーは聞いた。
「美味いに決まっておろう」
ムッとしてギルガメッシュが言い返す。
「我の弟は、そこいらの奴とは違うのよ。料理上手、綺麗好きで掃除も手を抜かず、裁縫も得意。家計のやり繰りも上手くてな。まさに理想の妻よ!まぁ、我の目が黒いうちは、嫁にはやらんがな!」
「……てめぇの目は赤だろ、馬鹿め」
世迷言を言い始めたギルガメッシュに、クーは頭を抱えた。
どんだけ溺愛してんだ、こいつ。
「理想の妻って言ったって、男じゃ嫁になれねぇだろ」
「たわけ!我の弟を知らんからそう言えるのだ!」
「へぇ、そこまで言われちゃあ気になるな。写真の1つでも持ってるだろ、見せろよ」
「……何故そのようなことをしなければならん」
「ああ?」
「我の弟を見たいなぞ、貴様には勿体ないわ」
「喧嘩売ってんのかよ!」
ギルガメッシュは今までの饒舌が嘘のように黙り込むと、不機嫌そうに弁当の残りを食べ始めた。
ギルガメッシュにここまで溺愛される弟というのを、一度確認してみたいと好奇心が促すが、頑固者のギルガメッシュがこうなってしまっては、件の弟君を見ることは出来ないだろう。
クーは仕方がないと、途中になっていたゲームの続きをするために、携帯電話に視線を落とした。
その時。
「兄様?」
クーの背後から、小さな声が聞こえた。
その声に隣で一心不乱に弁当を食べていたギルガメッシュが、驚くほど俊敏に反応し席を立ちあがる。
「シロウ!?」
室内に響き渡る声で、ギルガメッシュは吼えた。
「何故ここにいるのだ!?」
「今朝言っただろう、今日は友人とオープンキャンパスに行くと」
「見学の件は聞いておる。だが我の大学とは聞いておらんぞ」
「驚かそうと思ってね、黙っていたのさ。どうだ、驚いたか?」
「驚きすぎて、心の臓が飛び出しかけたわ」
「ふふふ。それなら成功だな」
その会話に、クーは咄嗟に反応が出来なかった。
ギルガメッシュが口にした懐かしい名前と、忘れられない声を耳にしたからだ。
信じられない思いと、奇跡に喜ぶ気持ちを抑え、クーはゆっくりと振り向いた。
そして、そこに立っていた青年を目にして、クーは無意識に呟いていた。
「エミヤ?」

12へつづく。
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