【fate槍弓】永遠にここで君を待つ06

タイトル:【fate槍弓】永遠にここで君を待つ06
内容:FGOで『槍ニキが来たら槍弓小説書きます』と呟いたら、次の日に槍ニキが来た記念に、真冬のホラー体験をプレゼント。
ややグロテスクな表現、ホラー要素が含まれます。

つづきからお読みください。




◆◆◆

小さな本棚と文机があるだけの座敷牢は、3畳ほどのスペースしかなく、押入れも布団すらない。
牢の入り口には鍵が掛かられてもおらず、クーが軽く押しただけで簡単に開いた。
低い入り口を腰を折って潜り、中に入る。
文机の上に、白い紐で括られた赤と黒の表紙の本が置かれている。
クーはそれを手に取ると読み始めた。

『 なわの神子さまにえらばれた。
とてもめいよなことだと、みんながいう。
人をたすけることができる、大切な役なのだそうだ。うれしい。

今日からみやさまと同じやしきに住むことになった。
大きなおやしきだから、きんちょうする。
名もいただいた。えみやの家の子になったのだからと言われた。
そそうのないようにしないと。

明日は、初めての儀式だ。
染魂の儀というらしい。
これでやっと役に立てる。

いたい、いたい。

髪が白くなってきた。
当主様と神官様はとても喜んでいる。
澱が多く溜まった方が良い神子になれるそうだ。

髪は完全に色が抜けた。
今朝、鏡を見ると左の米神の皮膚が黒く変色していた。
嬉しい。

神官様が俺の儀式の日取りを決められた。
俺の澱が溜まり切ったのだ。
元は赤茶であった俺の髪も金茶であった瞳の色も抜け切った。
あとは現世への未練を絶つだけ。
今日から座敷牢へと移ることになる。この部屋ともお別れだ。』

それは『エミヤ』の日記だった。
縄の神子に選ばれた子供の綴った思い出。
子供は神子に選ばれたことを喜んでいたようだ。
だか日記はここで終わっている。
ここが御子の座敷牢ならば、どこかに続きの日記がありそうだ。
そう思ったクーは、本棚を漁り始めた。
「お、ビンゴ!」
クーが手に取ったのは、白い組紐で止められた黒い本だった。

『 座敷牢での生活は快適だ。
外に出ることは出来ないが、ここにいるのならば自由にしていて良いらしい。
食事に不自由することもない。
私は幸せ者だ。

瞳の色が変わってから視力が安定しない。
全く見えないこともあるし、逆に見えすぎて困ることもある。
どちらにしても本を読むには難儀する。

今日は見えすぎる日だ。
本を読むことが出来ないから、窓から中庭を見ることにする。
中庭には見事な桜の大木がある。
世話役に問うたら、この屋敷が建った時よりあるらしい。
大長老なのだ。素晴らしい。

きょうはみえない。ふあんだ。

そろそろ桜が咲く。楽しみだ。
あと何回見られるだろう。私の儀式はもうすぐだ。

あの人は誰だろう。
中庭で桜を見ていた、美しい青空のような髪をした太陽のような人。
私に気が付いて笑顔で手を振ってくれた。

今日もいる。
私はここから出られない。
世話役から中庭の大長老の調子が悪いと聞いた。
木のお医者さんだろうか。

中庭を歩く許可が出た。
あの人と話した。彼はランサーというらしい。

今日は雨。外に出てはいけない。
ランサーが私に会いに来てくれた。
私は世間知らずな所がある。
ランサーは物知りだ。
色んな事を教えてくれる。とても楽しい。

ランサーには沢山の思い出をもらった。
これで1人になっても寂しくない。

ランサーが来なくなった。
世話役に聞いたところ、田舎に帰ったという。
本当だろうか。

夢を見た。
ああ、なんということだ。
神官様は彼を隠してしまわれた。
私の所為で、彼は、ランサーは。

明日は儀式の日だ。
私は裂かれ罰を受ける。
だがこれで人が助かるのならば、私はそれで良い。
ああ、でも、ランサー。叶うなら、君ともう1度会いたい。
また会えるのならば。永遠にここで君を待っているよ』

「助けて」
その声に顔を上げると、座敷牢の外にシロウが立っていた。
金茶の瞳が、無機質にクーを見つめている。
「坊主、お前の名は『エミヤシロウ』だな。あれはお前か」
符合はいくつもあった。
髪の色も瞳の色も、肌の色さえ変わってしまったが、その大本は今も変わっていない。
「俺を助けてあげて」
ああ、やはり。
「……必ず助けてやる」
クーの言葉を聞いたシロウは、微かに笑みを浮かべて消えた。
彼は、未練を残したまま殺された。その未練を果たすことは、クーには出来ない。
だがどうしてもクーは、エミヤを助けてあげたかった。
クーはそっと、裏表紙に書かれた『衛宮士郎』の名を指先でなぞった。

07へつづく。
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