ねぇ、だから。(日一シリアス)

※この話は、最終的に別れ話となります。
そういう話が苦手な方は読まないようにしてください。


ねぇ、だから。


冬獅郎と一護が付き合うようになって、もう数十年が経った。
その間に、一護は医学系の大学に進学し、卒業後は実家の黒埼医院を手伝うようになった。
冬獅郎は、相変わらず十番隊隊長を務めており、コンプレックスだった身長も、数年前から急に伸びだし、今では一護の身長を少し追い抜いていた。
謀反を起こした愛染たちの一件も、一護やその他多くの助けを借り無事に収める事に成功していた。
ルキア処刑未遂事件以来、一護は死神代行という職に就き、それは今に至るまで続いている。
その事に喜んだ一部の死神たちは、その後すぐに冬獅郎と一護が付き合い始めたことにより、大いに落胆する事になった。

「冬獅郎。」
「なんだ?一護。」
一護は、久しぶりの休暇を尸魂界で過ごしていた。
もちろん、恋人である冬獅郎とともに居るためにだ。
「好きな花ってあるか?」
「花…か?どうしたんだ、急に。」
「ん。なんとなく、さ。で、花。何が好きなんだ?」
冬獅郎は、十一番隊からまわってきた期限ぎりぎりの書類を書いていた手を止めて、一護の質問に答えようと、己の好きな花について考え始めた。
「好きな花か。そうだな。『紫陽花』や『向日葵』なんか結構好きだぞ。」
「へ~。なんで?」
「『紫陽花』は情緒があるし、『向日葵』は、一護、お前を思い出すから。」
そう言って笑う冬獅郎に、一護は一瞬の間に真っ赤に染まった。
いくら付き合いが長くても、冬獅郎のこのような言葉に慣れることはなかったらしい。
「…馬鹿。」
「なんとでも。お前はどうなんだ?」
「何が?」
「花。なにが好きなんだ?」
「俺は、そうだな~、『椿』かな。」
「『椿』…か?」
「おう。鮮やかだし、赤くて綺麗だろ。…それに、あの散り方。綺麗に内に散るところが、潔くて好きなんだ。」
「そうか?」
俺はあんまり好きじゃないがな。そう言って、冬獅郎は残りの仕事を終わらすために、業務に戻った。
その時、何かを耐えるかのように笑った一護の表情を、冬獅郎が見ていたら、その後の展開が少しでも変わっていたかもしれない。

数日後。一護が現世に戻る日の前日。
場所は、十番隊の敷地内にある冬獅郎の屋敷。
一護と、冬獅郎は、そこの縁側で並んで月を眺めていた。
「一護。今日はどうしたんだ?元気がないようだが。」
「…うん。あのな、話、聞いてくれるか?」
一護は、そう言うと、縁側から立ち上がり、中庭の方へと歩みを進めた。
「冬獅郎は、俺が好きな花の話をしたの、覚えてるか?」
「…ああ。『椿』の花のか。」
「うん。それ。」
「それがどうしたんだ?」
一護の話は要領を得ない。
しかも、先ほどから庭の方ばかりを見ていて振り返りもしない一護に、冬獅郎は不安を覚えた。
「…俺と、冬獅郎が付き合い始めて、結構経つよな。俺も、もういい年になっちまった。」
そう言って、ハハハと乾いた笑い声を発する。
「でも、冬獅郎は相変わらずだ。何も変わらない。」
そんなことはない。
そう言おうとした。
しかし、その前に、一護が冬獅郎の方に振り向いた。
その顔には、なんの表情も浮いていない。
それが、なぜだか無性に恐かった。

凪いだ風のような一護が口を開く。

確かに、背は伸びたし、霊圧も高くなったよ。…でも、俺が言いたいのは、そういう事じゃないんだ。
ねぇ、冬獅郎。俺とお前って、傍から見たらどう見えるのかな。
親子?兄弟?
今は辛うじて恋人って言っても通じるかもしれない。
でもさ、この先もそうとは限らないんだ。俺はどんどん年を食って、いつかおじいちゃんになる。でも、冬獅郎は、違う。
だって、俺と冬獅郎とじゃ時間の流れが違いすぎる。
俺がおじいちゃんになっても、冬獅郎は変わらない。今のまま。そのままの姿なんだ。
別に、それが羨ましいんじゃないだよ?
そうじゃないんだ。
俺が言いたいのは、そう言うんじゃなくって。

そう言って、一護はとても苦しそうな顔をした。
「そうじゃなくて、なんなんだ。」
「…今はそうじゃなくても、いつかは、冬獅郎が、俺を疎ましくなるんじゃないかって。俺が冬獅郎を妬ましく思うんじゃないかって。それが、とても恐いんだ。」
初めて聞いた一護の本心。
そんなことを思っていたなんて。
「俺が、そんなこと思うと、本気で思ってんのか?」
悲しかった。そして、とても不甲斐なかった。
一護にそんな事を考えさせてしまっていた自分に対して、ぶつけようのない怒りが込み上げてきていた。
冬獅郎は、今にも崩れ落ちそうなほどの痛みを抱えた一護を抱きしめようと、庭に足を下ろした。
「来ないでくれ!」
一護の悲痛な声が響く。
「一護。」
「今は、そうじゃないかもしれないけど、未来なんて分からないじゃないか!!」
そう言って、冬獅郎の瞳を正面から射抜く。
「俺は冬獅郎に嫌われたくないし、冬獅郎の事嫌いたくなんかない!」
だから。
「冬獅郎の事好きなうちに、まだ綺麗なままの思い出にしたいんだ。」
一護の頬に、耐え切れないように一粒の涙が伝った。

ねぇ、だから。

最後に笑った一護の顔は、今までで一番綺麗で、一番悲しかった。
冬獅郎は、その顔を忘れる事が出来ない。

椿の花のように、潔く、残酷に、一護は冬獅郎の元から去って行った。

おわり。



あとがき。
…実は、この話、日一を好きになった当初から考えていました。
死神と人間の恋愛。
そこに、時間の概念は、あまりにも残酷に降りかかります。
いくら冬獅郎が気にしないといっても、一護はそればかりに気をとられてしまうと、個人的に思っています。
恋一も同じです。
悲しいですが、夢を見るだけではいられません。

『椿』という花を使いましたが、管理人も、この花の生き様(というのか?)は好きです。
尻切れトンボになりましたが、結構満足です。

神流木 貴皇
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テーマ : BLEACH - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

貴皇さんすごーい!
作家ですか?
コーヒー飲みながら拝見させて頂きました
お邪魔する楽しみが増えそうです^^

アワワワっ(⊃//∀//⊂)!!

スコールさん。こんばんは。

そんなに褒めていただけるなんて、すごく嬉しいです!!
作家…というわけではありません。
下手の横好きです。
でも、小さいころは『小説家になる!!』と言っていましたが(汗)。

小説、褒めていただき、ありがとうございますVv

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既往さん スコールさん
ご無沙汰してます!!!!!!

ざっと二年ぶりでしょうか。
社会不適応を起こしてひきこもってました(笑)。

立派なひきこもりとして名に恥じることなく頑張ります。

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