もしもお前が真紅を欲するならば3(大振、花井総受けパロ)

※このお話はおおきく/振りかぶってのキャラで、人魚姫の話をやろうという、ちょっとふざけた話です。花井君総受けなので、苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。
では、同志の方は続きからどうぞ。
前回のあらすじ→魔女阿部の助力の下、地上の城へ来た梓姫。しかし、そこにはすでに婚約者三橋姫の姿が・・・。刻々と近づく運命の時。このまま梓姫は海の泡と消えてしまうのか!?
(なんの活劇だ・・・。)


もしもお前が真紅を欲するならば3


煌くシャンデリアに、豪華な食事、そして繊細な音楽が奏でられている大広間で、梓姫は最後の夜を過ごしていました。
今日は地上の王国の末の皇子、悠一郎皇子の結婚式の日です。
そして、それと同時に、海の王の末の人魚姫、梓姫の最後の日でもありました。
魔女阿部の力で人間になった梓姫は、次の日の朝日と共に海の泡と消えてしまう運命なのです。
大広間の中央には、正装に着替えた悠一郎皇子と、一際煌びやかなドレスに身を包んだ三橋姫が寄り添うように立っていました。
梓姫は、壁際で足の痛みを耐えながら、悠一郎皇子の笑顔を心に刻みます。
悠一郎皇子の笑顔は、梓姫が始めて悠一郎皇子を見たときの笑顔と、とてもよく似ていました。
梓姫は、そう短くもない間を悠一郎皇子の傍で暮らしていたので、その笑顔が悠一郎皇子が幸せな時のものだと分かりました。
幸せそうな二人。
幸せそうな風景。
しかし、そこには梓姫の姿はあてはまりません。
梓姫は座っていた椅子からゆっくりと立ち上がると、悠一郎皇子が梓姫を見ていないのを確認して、その場で軽く頭を下げて最後の挨拶をしました。
そして、声の出ない口を動かし、精一杯の感謝を述べて、会場を後にしました。

梓姫は、城の外れにあるバルコニーから海を見ています。
海から離れた梓姫は、海を間近で感じられるこの場所を、とても気に入っていました。
潮風に吹かれ、梓姫は今までの自分を省みます。
人魚姫として、致命的に目立たない尾の色を持って生まれてきた梓姫。
それでも愛してくれた家族たち。
優しくしてくれた海の仲間。
突然やって来た梓姫を暖かく受け入れてくれた城の皆。
一生懸命に接してくれた三橋姫。
そして、愛しい悠一郎皇子。
想いは伝えられませんでしたが、梓姫はそれでも構いませんでした。
自分はただ海で溺れていた皇子を助けただけ。
自分はただ海で腕輪を無くしただけ。
いつのまにか、梓姫は自分にそう言い聞かせるようになっていました。

月明かりに照らされた海面を、梓姫はじっと見つめます。
ふと、月の写った海面が揺れました。
「梓!」
そう言って現れたのは、巣山姫でした。
「無事だったんだね。よかったぁ。」と水谷姫。
梓姫はとても驚きました。
それもそのはず。
何も言わずに海の宮殿を飛び出した梓姫は、他の人魚姫たちが追いかけてくるなんて、夢にも思っていなかったのです。
「梓、話は魔女から聞いたよ。」と栄口姫。
「腕輪は取り戻せたのか?」と泉姫。
梓姫は首を左右に振り、腕輪は諦めた事を伝えます。
「どうしたの、梓。悲しそうな顔をしてるよ?」と沖姫。
「何かあったのか?」と巣山姫。
この質問にも、梓姫は首を横に振り、なんでもないと微笑みます。
「今日は悠一郎皇子の結婚式なんだってね。」と栄口姫。
「相手は隣国の三橋姫だって言ってたよ。」と水谷姫。
「梓が助けたことを忘れてんのか、あの馬鹿皇子は。」と泉姫。
「梓、あんな男は忘れて、帰ってきなよ!」と沖姫。
「父上には俺たちから言っておくから。」と巣山姫。
梓姫は、人魚姫たちの言葉に、耐え切れないように泣き始めました。
海を、仲間を、そして人魚姫たちを裏切った梓姫を、皆は許して、そして再び迎え入れると言うのです。
梓姫の心には感謝の気持ちが溢れていました。

しかし、その誘いに、梓姫は答えを返せません。
なぜなら、後数時間の内に、梓姫は海の泡と化してしまうのですから。
「梓、これを受け取れ。」と巣山姫。
巣山姫の手には、一振りの短剣が握られています。
「これで悠一郎皇子の胸に刺すんだよ。」と沖姫。
「悠一郎皇子の流した血は、梓を人魚に戻すんだ。」と水谷姫。
「人魚に戻って、海に帰っておいでよ。」と栄口姫。
「おれたちの尾の色と引き換えに、魔女から貰ってきたんだぜ。」と泉姫。
その言葉に、梓姫は驚いて皆の尾を見ます。
そこには、かつての色とりどりの美しい尾はなく、かわりに闇のように輝く黒の尾があるばかりでした。
人魚姫たちの行動に、梓姫の涙はますます溢れてきます。
梓姫の心は感情の嵐で切り裂かれていました。
ぐちゃぐちゃな頭で、この短剣は受け取ってはいけないと言うことだけは理解しました。
困ったのは、人魚姫たちです。
人魚姫の命ともいえる尾の色を捧げてまで貰ってきた短剣を、肝心の梓姫が受け取ってくれないのです。
このままでは、大切な梓姫が目の前で海の泡となって消えてしまいます。
「梓、梓。どうか短剣を受け取ってくれ。」
人魚姫たちは口々にそう言い、短剣を梓姫のいるバルコニーへと投げ込みました。
足元に転がり込んだ短剣ですが、梓姫は頑としてそれを受け取ろうとしません。

遠くから聞こえてくる披露宴の音楽が止み、静まっていた海に、再び波が起きました。
海の中から現れたのは、魔女阿部でした。
「梓姫。人魚姫たちの好意を無駄にするのか?」
魔女阿部が問いかけます。
しかし、梓姫は泣いていて答えません。
そのあまりにも痛々しい姿に、魔女阿部は梓姫を抱きしめたい衝動に駆られました。
しかし、それは出来ません。
そこで、ある賭けに出ることにしました。
それは、梓姫が幸せになれる、最後の道です。
「梓姫、これを覚えているか?」
魔女阿部が取り出したのは、梓姫の声が収められた銀色の小瓶でした。
驚いた梓姫は、声が出ないのも忘れて口を動かしました。
「どうしてそれが・・・え?」
すると、梓姫の声が小瓶から聞こえてきました。
驚いた人魚姫たちは、一斉に魔女阿部を見ます。
「この小瓶から、ずっとお前の声が流れてた。」
話をする魔女阿部の顔は、どこか辛そうです。
「梓姫、本当に腕輪はいいのか?」
「・・・あれは三橋姫が、悠一郎皇子に貰ったものだ。もう俺のもんじゃない。」
「俺たちが梓に贈った、大切な物だろ?」と巣山姫が悔しそうに言います。
「良いんだ、巣山。一度でも無くしてしまった俺が悪いんだから。」
「梓姫、悠一郎皇子のことは、本当に諦めるのか?好きなんだろ?」
「・・・好きだよ。はじめて見た時から。でも、アイツが好きなのは、俺じゃない。」
「悠一郎皇子は相手を思い違いしているんだよ。」と水谷姫が言います。
「嵐の日に悠一郎皇子を助けたのは、梓じゃないか。」と沖姫も加勢に入ります。
「・・・良いんだ。」
梓姫の覚悟は堅いようでした。

「梓姫、俺が言ったことを覚えているか?」
魔女阿部の質問に、梓姫は覚えがないのか、怪訝そうな顔をしています。
「『何かあったらまた来い。俺は役に立つぞ。』、俺はそう言ったな。梓姫、俺はお前の本当の望みを、まだ聞いてないぜ。」
「俺の、本当の望み?」
「ああ。言ってくれ。俺は、お前の役に立ちたいんだ。」
梓姫は、泣き腫らした目を魔女阿部に向け、じっと見つめます。
魔女阿部の優しい声は、梓姫のささくれた心に染み渡りました。
あと少しで自分は海の泡になってしまうんだから、最後くらい、我侭を言っても良いだろうかと、梓姫は思いました。
「・・・これで最後だって言うんなら、俺は。俺は、自分の声で悠一郎皇子に好きって言いたかった。」
「やっと言ったな、この意地っ張りが。」自愛に満ちた顔で魔女阿部が言いました。

「ああ、俺もこのときをずっと待ってたんだ。」
梓姫の背後から聞こえた声は、梓姫が恋焦がれていた悠一郎皇子のものでした。
驚いた梓姫が声のした方を振り向くと、そこには煌びやかな衣装を身に纏った悠一郎皇子と、寄り添うように立つ三橋姫がいました。
「あずさ、お前が俺の血を欲するんなら、俺は幾らでもこの血をくれてやる。でも、それは、梓の望む物じゃないだろ?」
悠一郎皇子が梓姫に優しく問いかけます。
「・・・俺は、・・・。阿部、巣山たちの尾の色を元に戻してくれ。この結果は俺の自業自得なんだから、巣山たちが背負うべきじゃない。」
「その短剣を使わずに海に還せば、あいつらの色は主の元に戻る。」
それを聞いた梓姫は、迷わず足元に有った短剣を、遠く海の深い所に投げ捨てました。
すると、海に沈んだ短剣は、一瞬の内に人魚姫たちの尾の色となり、それぞれの人魚姫たちの尾に戻っていきました。

「悠一郎皇子、助かった。約束の報酬だ。」
そう言って、魔女阿部は大切に抱えていた銀色の小瓶を、バルコニーにいる悠一郎皇子へと投げてよこしました。
「小瓶の中身を飲ませろ。それで声は元に戻る。」
悠一郎皇子は早速梓姫に、銀色の小瓶の中身を飲ませます。
混乱していた梓姫は、されるがまま中身を飲み干し、軽く咳き込みました。
「・・・ケホッ、あ。俺の、声?」
「阿部、一体これはどういうことなんだ?」と巣山姫が魔女阿部に問いかけます。
「一度行った奇跡は覆せないし、自分にために奇跡を行うことは禁止されている。だけど、俺はどうしても梓姫を助けたかった。」
「だから、阿部は俺のところに来たんだよ。」
「梓姫が悠一郎皇子と結ばれる可能性は低かった。このままでは、梓姫は海の泡となってしまう。それを回避するには、二人が結ばれれば良い。」
「俺は阿部に『満月の晩に三橋姫と結婚式をあげ、海の見えるバルコニーに二人で来ること』を頼まれた。」
「その報酬として、俺は悠一郎皇子に『人魚の声』を与えると約束した。」
「最初は、何のことだかわかんなかったよ。でも、思い出したんだ。」
悠一郎皇子は、梓姫の手を握り、正面から梓姫の目を覗き込みます。
「俺を助けてくれたのは、あずさだろ?」
「お、俺も、見たんだ!」
普段からしゃべることが苦手な三橋姫は、自分の話をゆっくりと聞いてくれる梓姫がとても好きでした。
だから、魔女阿部から頼みごとをされた時も、直ぐに快諾しました。
「砂浜に、いた、人魚は、あずさ、だよね!」
そう言って梓姫に駆け寄った三橋姫は、大事にしていた腕輪を、梓姫に手渡しました。
「俺が、頼まれたのは、『腕輪を、梓姫に、返す、こと』だよ!」
「その報酬に、三橋姫が望んだのは『梓姫の足の痛みを取り除くこと』だ。」
腕輪が梓姫に戻った瞬間、梓姫の足の痛みは、嘘のように消えました。
混乱の中、驚き、そして涙を流し続ける梓姫を、悠一郎皇子はとても愛おしく思いました。
「あずさ、ずっと忘れててごめん。俺、三橋があずさのことを話してくれなかったら、思い出せなかったんだ。」
悠一郎皇子の目にも薄らと涙の膜が張っています。
「俺は、初めて、あずさと、会った時、あの時の、人魚だって、わかった、よ!でも、あずさは、言わなかった、から、言っちゃいけないのかな、って。」
梓姫は、三橋姫の言葉に、泣きながら三橋姫を抱きしめました。
「ありがとう。ありがとう。」
抱きしめられ慣れていない三橋姫は、顔を真っ赤にしながらも、梓姫の背に手を回し、ギュッと力強く抱き返しました。
「あずさ。今更で呆れられるかもしれないけど、でも、言っておきたいんだ。あずさ、俺のお嫁さんになってくんない?」
梓姫は、戸惑うように抱きしめていた三橋姫を見ます。
三橋姫は悠一郎皇子と結婚するためにこの国にやって来たのです。
「俺の事は、気にしない、で!」と笑顔で三橋姫が言います。
「三橋には、俺の相談役として、国の重役についてもらう予定なんだ。」
二人を交互に見て、梓姫は海にいる人魚姫たちを見ました。
「海に梓がいないのは淋しいけど、そいつといることが梓の幸せなら、俺たちは歓迎するよ。」と悔しそうに巣山姫が言います。
「ここに来れば、梓に会えるんでしょ?」と沖姫。
「梓、笑ってよ。俺、梓の笑った顔が大好きなんだ。」と水谷姫。
「俺たちなら平気だから。梓の思うようにしなよ。」と栄口姫。
「悠一郎皇子。梓を泣かせてみろ、そん時は、俺たちはお前を許さないぜ。」と悠一郎皇子を泉姫が脅します。
それでも梓姫は迷います。
そんな梓姫を見かねた魔女阿部が、梓姫に言いました。
「もし、そいつに愛想を尽かしたら、いつでも俺のところに来い。俺は役に立つぞ。」
梓姫は、皆の気持ちに、とても嬉しくなりました。
今まで氷のように冷め切っていた心が、春の日差しのように温かくなっていきます。
「ありがとう、皆。」
そして、梓姫は微笑みました。
その笑顔は、傍で見ていた悠一郎皇子に勇気を与えました。
「あずさ、俺のお嫁さんになってよ。」と悠一郎皇子が再度言います。
「・・・幸せにしろよ?」と頬を染めながら梓姫が答えます。
「・・・っもちろん!幸せにするよ、ゲンミツに!!」
こうして、海の王の宝物は、一人の青年の物になりました。
それは、人魚姫が助かったかもしれない、もう一つの結末。


終わり。

☆あとがき☆
長い上に中途半端な出来に・・・。
もっと精進しろ、自分。
人魚姫梓と、皇子悠一郎の話は、ひとまずこれで終わりです。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
感謝でいっぱいです(*^∀^*)。


お礼代わり・・・と言ったら微妙なんですが、ちょっとおまけがあります。
作品の雰囲気を著しく壊すので(笑)、ギャグが苦手な方は見ない方がいいかも。
誤字脱字ありましたらご報告下さい。
無断転用はしないで下さい。
スポンサーサイト

テーマ : おおきく振りかぶって - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)