もしもお前が真紅を欲するならば2(大振、花井総受けパロ)

※このお話はおおきく/振りかぶってのキャラで、人魚姫の話をやろうという、ちょっとふざけた話です。花井君総受けなので、苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。
では、同志の方は続きからどうぞ。
前回のあらすじ→大切な腕輪を取り戻すために、人間になろうとする梓姫。向かう先は深い海の底にある海の谷だった。果たして梓姫は無事に腕輪を取り戻すことが出来るのか?(もうすでに人魚姫から外れてきたような気がしないでもない(笑)。)


もしもお前が真紅を欲するならば2


海の谷は、梓姫が想像したよりも、ずっと明るい場所でした。
宮殿の海と同じように、鮮やかな色の魚たち。
どういう仕組みなのか、自ら発光している色とりどりの珊瑚。
海底にはキラキラと光を反射する綺麗な石がいっぱい散りばめられています。
見たこともない世界に、梓姫は感嘆の溜息を吐きました。
「おい。誰だ、お前。」
後ろからかけられた声に、梓姫は慌てて身体の向きを変えました。
「あ、はじめまして。俺は西広王の末の人魚姫で、梓って言います。」
「ああ。黒橡(くろつるばみ)の梓姫か。」
黒い衣装に身を包んだそいつは、そう言って梓姫の全身を観察しました。
「俺は阿部だ。ここらでは魔女って呼ばれてるがな。」
魔女阿部は、梓姫の手を取りながら言いました。
「あんたが魔女か!」
魔女阿部の言葉に、梓姫は嬉しそうに笑います。
その笑顔は、魚たちが待ち望んでいた、梓姫本来の笑顔でした。
「・・・人魚姫がこんな辺境に来るってことは、俺に何か用があるんだろ?」と魔女阿部。
「おう。魚たちが教えてくれたんだ。あんたが人間になる方法を知ってるって。」
梓姫の言葉に、魔女阿部は眉を顰(しか)めました。
「梓姫。人魚が人間になることは禁忌の一つだぜ。」
「知ってるよ。でも、俺はどうしても人間になりたいんだ。」
梓姫の決意は揺らぎません。
あの腕輪を取り戻すために。
・・・悠一郎皇子の誤解を解くために。
これだけは譲ることは出来ないのです。
「お願いだ、阿部。俺を人間にしてくれないか?」
梓姫は握ったままだった魔女阿部の手を、ぎゅっと握り締めました。
そして、魔女阿部の目を真っ直ぐに見つめます。
「・・・その分の代価はもらうぞ。」
魔女阿部の言葉に、梓姫は嬉しそうに笑い、魔女阿部に抱きつきました。
「ありがとう、阿部!」
抱きつかれた魔女阿部は、顔を真っ赤にしながら、梓姫の背へと手を回し、ギュッと抱きしめ返しました。

「代価はお前の声だ、梓姫。」
抱き締めあったまま魔女阿部が言います。
「声・・・か?」
梓姫は小首を傾げました。
俺なんかの声を貰って、阿部は何をする気なんだろう、とその顔には疑問が浮かんでいます。
「役に立つなら、幾らでもやるぞ?」
「声は一つだろうが。」と呆れたように魔女阿部が言います。
梓姫本人は気が付いていませんが、その声はとても美しく、聴く者の心を奪うほど素晴らしいものでした。
梓姫の身体を名残惜しそうに離した魔女阿部は、梓姫の手を取り、自らの工房へと案内しました。
そして、工房の奥の部屋から銀細工の施されたとても綺麗な小瓶と、使い古された赤茶色の小瓶を取り出しました。
魔女阿部は、銀色の小瓶を梓姫に渡します。
「その小瓶にお前の声を入れろ。そしたらお前を人間にしてやるよ。」
「本当か!?」
梓姫は、急いで声をいれようとしました。
それを魔女阿部が止めます。
「但し、お前にあげれるのは人間の足だけだ。」
「それだけで十分だよ、阿部。」
「人間の足を手に入れたお前は、歩く度に訪れる体を引き裂かれるような激痛に耐えなきゃならない。」
魔女阿部の言葉に、梓姫の顔は曇ります。
「梓姫、そんな代償を払ってまで、お前は何をしたいんだ。」
「俺は・・・。」
梓姫は言葉に詰まってしまいました。
あの腕輪は確かに大切なものでした。
しかし、その腕輪のためだけに、禁忌を犯してまで地上に行くのでしょか。
梓姫は悩みます。
梓姫の頭の中に、悠一郎皇子の太陽のような笑顔が浮かびました。
ああ、そうか、と梓姫は思いました。
「俺は、腕輪を取り戻したい。それと、悠一郎皇子のあの笑顔をもう一度見たいんだ。」
梓姫の言葉に、魔女阿部は痛そうな顔をします。
「・・・そうか。」
「ああ。」
梓姫は自分の気持ちに気が付いたのです。
「梓姫の決意は分かった。」
そう言った魔女阿部は、梓姫に赤茶色の小瓶を渡します。
「地上へ行き、この小瓶の中身を一気に煽れ。それでお前は人間の足を手に入れられる。」
ただし。
そう魔女阿部は続けます。
「もし悠一郎皇子が他の誰かと結婚するような事になれば、お前は海の泡となって消えちまうぜ。」
朝日と共にな。
魔女阿部は俯き言いました。
「分かった。ありがとうな、阿部。」
話を聞いた梓姫は、銀色の小瓶を咽にあてがいました。
「魔女阿部に、俺の声を。」
銀色の小瓶は仄かに光り、梓姫の澄んだ声を収納しました。
しゃべることの出来なくなった梓姫は、精一杯の感謝を表すかのように、魔女阿部に力一杯抱きつきました。
魔女阿部も、悲しそうな顔をしながら梓姫を抱き返します。
「・・・何かあったらまた来い。俺は役に立つぞ。」
魔女阿部の言葉に勇気付けられた梓姫は、綺麗な笑顔を残して、地上へ向かいました。

悠一郎皇子を助けた砂浜へとやってきた梓姫は、早速魔法の薬を煽りました。
薬は梓姫の咽を焼き、熱さを伴いながら全身に広がっていきます。
体が変わっていく激痛に、梓姫は目を強く瞑り耐えました。
やがて苦痛が引き、目を開くと、そこにはすらりと長く、そして真珠のように白い人間の足がありました。
梓姫はとても喜びました。
暫くすると、砂浜に悠一郎皇子がやってきました。
悠一郎皇子は、いつもこの砂浜へと散歩しに来るのです。
「おい、お前。こんな所でどうしたんだ?」
悠一郎皇子の言葉に、梓姫は言葉を返そうとしますが、梓姫の口からは声が出ません。
梓姫の声は、魔女阿部の銀の小瓶の中です。
「・・・お前、声が出ないのか?」と悠一郎皇子。
梓姫は頷きます。
能天気な悠一郎皇子も流石に困ってしまいました。
「あー・・・、お前、俺んち来るか?」
悠一郎皇子の誘いに、梓姫はとても喜び、一生懸命頷きました。
「うしっ!じゃ行こうぜ。えっと・・・お前、なんてぇんだ?」
梓姫は、近くに落ちていた小枝で、砂浜に名前を書きました。
「あ、ず、さ?お前、あずさっていうのか?」
悠一郎皇子に名前を呼ばれ、梓姫は仄かに顔を赤くしながら微笑みました。
こうして、梓姫は地上のお城へと招かれることになったのです。

その頃。
海底の宮殿は、騒然としていました。
皆が、蝶よ花よと大切に育てた梓姫が、忽然と姿を消したのです。
「きっと梓があまりにも可愛いから、誰かに連れ去られたんだ!」と栄口姫。
「今頃、そいつに閉じ込められていて、泣いているよ!ああ、梓!可哀相に!」と沖姫。
「はやくたすけにいこうよー!!」と水谷姫。
「直ぐに助けに行くぞ!梓の危機だ!」と巣山姫。
「・・・皆、少し落ち着けよ。」と慌てる皆を泉姫が押しとどめます。
「泉!お前、梓が心配じゃないのか!?」
いつもは冷静な巣山姫が、珍しく泉姫に食って掛かりました。
「心配だぜ、もちろん。でもさ、梓が地上にいるって決まったわけじゃねぇだろ?」
泉姫の意見は最もです。
梓姫が海にいる可能性もまだ有るのです。
「・・・だが、・・・」
それでも巣山姫は諦め切れません。
「もし、梓がそいつに襲われていたら・・・っ。梓の純潔がっ!」と巣山姫。
「そんなことしたら、そいつ生かしておかないぜ?」と爽やかな笑顔で泉姫が言い放ちます。
その他の人魚姫も同意見らしく、次々に頷きます。
人魚姫たちは、少し度が過ぎるくらいに梓姫を愛しているのです。
「失礼します。」
そこへ現れたのは、梓姫と仲の良いウツボたちでした。
「梓姫なら、魔女のところさ!」とウツボ。
「魔女に人間にしてもらいに行ったのさ。」とマンボウ。
「人間になって、腕輪を取り戻しに行ったよ。」と良老アンコウ。
こうして、人魚姫たちはやっと事態を飲み込めたのでした。

梓姫がお城へ着くと、そこにはあの三橋姫がいました。
三橋姫の腕には、梓姫の大切な腕輪がキラキラと輝いています。
それを見た梓姫はとても悲しくなりました。
「あずさ、紹介するな!こいつが俺のこんやくしゃで、三橋ってんだ!」
「は、はじめ、まして!」と三橋姫。
梓姫は、内心の悲しみを隠して、にこりと笑い、丁寧に挨拶をしました。
「三橋。こいつ、そこの砂浜に倒れてたんだ。行く所がないらしいから、ここに住んでもいいか?」
「う、うん!いい、よ!」
三橋姫はとても良い人そうでした。

その日から梓姫は、地上のお城に住むことになりました。
話すことが出来ない上に、歩く度に体に激痛が走るので、ゆっくりとしか歩くことが出来ませんでした。
しかし、生来の負けん気で、梓姫は召使いの一人として、悠一郎皇子の身の回りの世話を、それは甲斐甲斐しくしました。
そんな梓姫を、悠一郎皇子も三橋姫も、もちろん城の誰もが好ましく思いました。
「あずさ。今度の俺の誕生日に、三橋と結婚することになったんだ。」
悠一郎皇子の部屋を掃除していた梓姫は、悠一郎皇子にそう言われて、とても驚きました。
「おれな。すっごい大きな嵐に巻き込まれたことがあるんだ。」と悠一郎皇子。
梓は、悠一郎皇子が嵐に巻き込まれたことを知っています。
悠一郎皇子を助けたのは梓姫なのですから、当然です。
「そのときに、俺を助けてくれたのが三橋なんだ。」
悠一郎皇子はとても優しい目で語ります。
梓姫の胸に痛みが走りました。
それは、梓姫が城で暮らし始めてから、ずっと続く痛みでした。
悠一郎皇子は、嵐の中で自分を助けてくれたのが三橋姫だと思っているのです。
梓姫のことなど、まったく覚えていなかったのです。
分かっていたことですが、改めてそれを聞いた梓姫は、泣き崩れそうなほど悲しくなりました。
しかし悠一郎皇子に覚られまいと、常に痛みの走る足に力を入れ、その場に踏みとどまります。
「三橋はいい奴だ。あの嵐で船の船員もみんな助けてくれたんだからな!」
まるで自分の手柄のように、楽しそうに悠一郎皇子が話します。
それを梓姫は、ただ微笑みながら聞くしかありませんでした。

三橋姫はとても優しく、とても可愛らしい姫でした。
そして梓姫の腕輪を、それは大事にしてくれています。
何度も接する内にそのことを知った梓姫は、腕輪のことを諦めることにしました。
一度は自分のもとを去った腕輪です。
きっと三橋姫の所へ行く運命だったのでしょう。
やはり自分には過ぎた宝だったのです。
腕輪をくれた皆の顔が浮かびましたが、梓姫はそう言い聞かせて腕輪を諦めたのでした。
しかし、腕輪を諦めた後も、梓姫は悠一郎皇子たちのもとを去れずにいました。
もしかしたら、梓姫のことを覚えているかもしれないと、淡い期待を抱いたからです。

梓姫は、悠一郎皇子のことが好きになっていました。
たぶん、初めて彼を見たときから恋に落ちていたのでしょう。
しかし、悠一郎皇子は、梓姫のことを覚えておらず、あろうことか梓姫の大切な腕輪を三橋姫にあげてしまったのです。
悲しくないといえば嘘になります。
しかし、梓姫は悠一郎皇子と三橋姫、ふたりとも好きでした。
だから、最後まで彼らの幸せを祝おうと思いました。
悲しみを抱いたまま、無常な時は静かに過ぎていきます。

そして、運命の日はゆっくりとやってきました。

3へつづく。

☆あとがき☆
うっかり長くなりました。ええ。予想外です。
・・・おかしいな、当初の予定では1話で終るはずだったのに(笑)。
それもなにも、梓に全く気付かない田島が悪いんだ!と、責任転嫁してみる。
そして、恥ずかしいことに、書きながら泣きそうになりました。
梓、健気過ぎ・・・。←自分で書いといて何言ってんだ。
しかし、阿部は良いとこ取りですね。
一瞬アベハナにしちゃおうかと思いました。
・・・次はアベハナにしよう。頑張れ、阿部(笑)。
誤字脱字ありましたらご報告下さい。
無断転用はしないで下さい。
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テーマ : おおきく振りかぶって - ジャンル : アニメ・コミック

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