もしもお前が真紅を欲するならば(大振、花井総受けパロ)

※このお話はおおきく/振りかぶってのキャラで、人魚姫の話をやろうという、ちょっとふざけた話です。花井君総受けなので、苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。
では、同志の方は続きからどうぞ。


もしもお前が真紅を欲するならば1


あるところに、とても偉大な人魚の王様がいました。
王様は名を西広といい、海を統制し、育み、そして大切に護る、とても偉大な王でした。
西広王には、6人の子どもがいました。
一番上の巣山姫は、しっかり者。
二番目の栄口姫は、癒し系。
三番目の泉姫は、毒舌家。
四番目の沖姫は、小心者。
五番目の水谷姫は、うっかりさん。
そして、末の梓姫は、人魚の中でも特に美しい姫でした。
しかし、末の姫は、家族以外の人魚たちから“落ちこぼれ”と蔑まされていました。
それは、梓姫の尾の色が、あまりにもみすぼらしかったからでした。

人魚の尾は、海の中で一番綺麗な色をしています。
それは、人魚たちの自慢でもあり、またアイデンティティーでもありました。
その色は総じて鮮やかで、海の他の生物や人間から、海の宝石とも呼ばれていました。
巣山姫は、茜(あかね)色の尾を、
栄口姫は、梔子(くちなし)色の尾を、
泉姫は、萌葱(もえぎ)色の尾を、
沖姫は、二藍(ふたあい)色の尾を、
水谷姫は、浅葱(あさぎ)色の尾を、それぞれ持っていました。
しかし、末の梓姫の尾の色は、黒橡(くろつるばみ)色をしており、魚たちはそれを見ては、いつも梓姫をからかっていました。
その様子に西広王と人魚姫たちは悲しみ、それぞれの尾の色を取り入れた腕輪を梓姫に送りました。
それは、とても美しく、梓姫の端整な容姿と相まって、梓姫の美しさをより一層際立たせました。
最初こそ梓姫を蔑んでいた魚たちも、成長すると共に美しくなってゆく梓姫に、次第に考え方も変わり、梓姫を蔑むものはいなくなりました。

幸せな日々が続き、梓姫が15歳の誕生日を迎えた日のことです。
梓姫は、初めて海面へと上っていきました。
すると、そこで一艘の豪華な船を見つけました。
その船の舳先には、一振りの剣を手にした小柄な少年がいます。
そして、豪華な装飾の剣を見事に操り、巧みな剣舞を舞っていました。
朝日の中でキラキラ光るその情景に、梓姫はすっかり心を奪われてしまいました。
梓姫はその少年に話しかけたいと思いましたが、海の掟で、人魚と人間は係わる事ができません。
梓姫は、とても残念に思いながら、その少年を忘れないために、その顔をじっと見つめました。
少年の鼻梁に散ったソバカスを心に留め、梓姫は宮殿に戻っていきました。

その数日後、海にとても大きな嵐がやってきました。
嵐の中、人魚たちは海の生物たちを守るために奔走します。
梓姫たち、人魚姫も例外ではありません。
「梓、こっちは俺らでやっておくから、入り江の魚たちを頼む。」
一緒に魚たちを非難させていた巣山姫にそう頼まれた梓姫は、入り江の魚たちを安全な珊瑚礁に避難させると、ふと海上にいたあの少年は大丈夫なのだろうかと、不安になりました。
「俺、あの船が気になっから、ちょっと様子見に行ってくる。」
「やめときな、末の姫。人間は俺らを殺す、悪い奴らだ。」近くにいたウツボが止めます。
「でも、あの人間は悪そうな奴には見えなかったぜ?やっぱり、行ってくるよ。」
「やめときな、末の姫。あんたは騙されているのさ。」そう言ったのは、梓姫と仲の良いマンボウでした。
「人間は、あんたたち人魚をただの金蔓(かねづる)としか見てないさ。悪いことは言わねぇからよ。人間に拘(かかわ)るのはやめときなんせ。」長い間生きている長老のアンコウが言いました。
しかし、それでもあの少年の姿が忘れられない梓姫は、謝りながら魚たちの制止を振り切って、荒れ狂う海上へと急いだのです。

海上はそれは酷い有様でした。
少年の乗っていた船はマストが折れ、船底に大きな穴がぽっかりと口を開け、今にも沈みそうな様子でした。
半分沈んでいる船を呆然と見つめていた梓姫は、我に返ると、急いで少年を探しました。
少年は板切れに摑まって気を失っていました。
梓姫は今にも海の底に沈みそうな少年を、慌てて抱きかかえます。
そして、抱きかかえたまま、海岸に向かって一生懸命泳ぎました。

息を切らしながら砂浜に着くと、梓姫は長い尾を必死に動かして、安全な所まで少年を引き摺っていきました。
人魚は陸を歩くことが出来ないので、尾は傷だらけになりましたが、梓姫はそんなこと気にも留めず、懸命に少年を運びます。
「おい。おい、大丈夫か?」
梓姫は少年に呼びかけながら、少年の身体の傷を点検していきます。
少年は足に大きな傷が出来ていましたが、幸いそれ程深い傷ではなく、梓姫の止血で直ぐに血は止まりました。
「・・・他の傷は放っておいても平気だな。」
安心した梓姫は、残りの乗組員も助けるために再び沖に戻りました。

最後の乗組員を浜辺に運び終え、梓姫が再び少年の元へ戻ってくると、少年は僅かに意識を取り戻したのか、隣にやってきた梓姫へと腕を伸ばし、梓姫の手を掴みました。
「・・・気が付いたのか?」
梓姫が声を掛けると、少年は梓姫の方へ視線を送ります。
しかし、少年の視線は梓姫の上を滑り一点に定まりません。
「あ、おい。大丈夫か、お前?」
慌てて呼吸を確認すると、か細くですが、確かに少年は呼吸をしていました。
そして、懸命に口を動かし、何かを訴えています。
「・・・他・・・奴は・・・ぶ・・・じ?」
「ああ、乗組員なら、皆無事だぜ。」
それを聞くと、少年は安心したように微笑み、再び気を失いました。

翌朝、疲れきって近くの岩場で寝ていた梓姫は、騒がしい音に起こされました。
音のほうを見ると、一台の馬車が砂浜へやってきました。
豪華な馬車から、一人の人間のお姫様が降りてきます。
「た、たじま、くん!」
そう言って大慌てで少年に駆け寄りました。
物陰に隠れて静かに見守っていた梓姫は、その様子に安堵しながらも、なぜか悲しい気持ちになっていました。
それでも、少年たちが無事に家族の元へ帰れたと、梓姫は安心して自分の城へと帰っていきました。

行方不明になっていた梓姫が、傷だらけで帰ってきて、人魚姫たちは大変驚きました。
そして、
「巣山。俺、昨日、たじまっていうやつを助けたんだ。」
帰ってきた梓姫にそう言われた巣山姫は、大変驚きました。
「梓、それはそこの国の王族の名前じゃないか?」
「え、そうなのか?」
梓姫は、今まで地上の事は教わらなかったので、王族の名前など知るはずもありません。
「今の国王には、5人の子どもがいたよね。」と、水谷姫が言いました。
「確か男は3人いるぜ。」と、泉姫が返します。
「梓、その少年の特徴って分かる?」そう問いかけたのは、栄口姫です。
「そうだな・・・。そういえば、すごく綺麗な踊りを踊ってたぜ。」
「踊り・・・か?それ以外には?」
「うん。あとは、鼻んところにな、ソバカスが有った。」
梓姫の言葉に、人魚姫たちはどよめきました。
「巣山、それって・・・。」沖姫が心配そうに巣山姫に問いかけます。
「ああ。梓、それは末の悠一郎皇子だよ。」
「ゆういちろう?」
梓姫は初めて聞く名前に、首を傾げます。
「末の皇子はとても綺麗な剣舞を舞うって聞くよ。梓が見たのはその皇子に間違いなさそうだね。」栄口姫が言いました。
「ねぇねぇ、それよりも皆。梓の傷の手当はしなくていいの?」水谷姫が言いました。
その言葉に、人魚姫たちは梓姫の傷を思い出し、大慌てで傷の手当を始めました。

そんなことがあって数日後。
梓姫は傍目に見ても落ち込んでいました。
家族から貰った大切な腕輪がどうしても見つからないのです。
あの嵐の中で無くしてしまったようでした。
気落ちした梓姫に、西広王や人魚姫たちはとても優しくしてくれます。
しかし、皆に笑顔を見せるものの、梓姫の落ち込みようはそれは酷いものでした。
普段の梓姫の笑顔は、魚たちに勇気をくれるものでしたが、腕輪をなくしてからの梓姫の笑顔は、見ているこちらが悲しくなるような儚げなものに変わってしまいました。
そこで、1匹の魚が梓姫に言いました。
「梓姫。もしかしたら、あんたが助けた皇子が、あんたの宝を持ってちまったのかもしれないぜ。」
梓姫は、そんなことはない、と言いました。
しかし、魚の言葉がどうしても気になった梓姫は、少しぐらいなら良いかと、一人で地上に向かいました。

地上に着いた梓姫は、直ぐに腕輪を探そうとしましたが、砂浜には先客がいました。
それは、梓姫が助けた悠一郎皇子と、嵐の日に砂浜で見かけたあのお姫様でした。
二人は、とても楽しそうに話しています。
「たじまくん!あし、治って、よかった、ね!」
「おう!ありがとうな、三橋!」
お姫様は名前を三橋というようです。
綿菓子のようにふわふわな髪の、可愛らしいお姫様でした。
二人の会話から、梓姫は悠一郎皇子の足が無事に治ったことを知り、安堵の溜息を吐きました。
「これ、お礼だ。」
そう言って悠一郎皇子が懐から大切そうに取り出したのは、梓姫が嵐の日になくした、あの大切な腕輪でした。
驚く梓姫を余所に、悠一郎皇子は腕輪を三橋姫に渡してしまいます。
「あの嵐の中、俺んこと助けてくれてサンキュな。」
悠一郎皇子は太陽のような笑顔で笑いました。
三橋姫は嬉しそうに腕輪を受け取ります。
その様子に、梓姫はとてもショックを受けました。
あの腕輪は梓姫が家族から貰った、命の次に大切な世界に一つしかない宝物です。
それに、あの嵐で悠一郎皇子たちを助けたのは、梓姫です。
あの三橋姫ではありません。
梓姫は、その誤解を解こうと、隠れていた岩陰から飛び出そうとしました。
しかし、それは叶いませんでした。
梓姫が地上へ行ったと聞いて追いかけてきた巣山姫と泉姫が、梓姫を止めたからです。
「梓、やめておけ。人間にかかわっても良いことなんてないぞ。」
「泉の言うとおりだ。勝手に勘違いしているんだ、放っておけ。」
泉姫と巣山姫の言葉に、梓姫は泣きそうな顔をしました。
「でも、あの腕輪は俺んだ!」
「また新しいのを作ってやるさ。」と巣山姫が優しく梓姫の頭を撫でます。
「あの腕輪は、あの人間にやっちまおうぜ。」と泉姫が梓姫の肩を軽く押します。
そうして、梓姫は海底の宮殿に帰って行きました。

その事が有ってからというもの、梓姫の落ち込みようはさらに酷くなりました。
花が咲くようだった梓姫の笑顔は鳴りを潜め、梓姫は一日中一人で地上を眺めては泣いています。
人魚姫たちが一生懸命励ましますが、それも一向に効果が出ません。
それに見かねた魚たちが梓姫に言いました。
「そんなにあの腕輪が気になるんなら、自分で取りにいけばいいさ。」長老アンコウが言います。
「無理だ。俺は人魚だぜ?」
梓姫は悲しそうな顔で笑います。
人魚は長い時間地上に居られません。
「平気さ!」ウツボが目一杯大きな声で言いました。
「ここからそう遠くない海の谷に、魔女が住んでる。そいつは、人魚を人間にしちまう魔法を知ってるんだ。」マンボウがゆっくりと説明します。
「人間になりゃあ、腕輪を取ってくるなんて簡単さ!」ウツボは、そう言いながら梓姫の周りを泳ぎまわります。
人間になれば。
その言葉に、梓姫の心は躍りました。
そして、魚たちにお礼を言うと、急いで海の谷に向かいました。

2へつづく。

☆あとがき☆
先に色名の説明です。こちらは古典で使用されているものを参考にしました。
茜(あかね)色→濃い赤の一段薄い色。ちょっと橙が入った感じ。
梔子(くちなし)色→黄色とクリーム色の間位の色。
萌葱(もえぎ)色→黄緑色。因みに萌黄も同じ色です。
二藍(ふたあい)色→濃い紫色の一段薄い色。
浅葱(あさぎ)色→空色。水色。
黒橡(くろつるばみ)色→黒に近い灰色。

梓が大切にしていた腕輪ですが、あれは家族が『派手な色のない(尾が地味)な梓が可哀相だから』という理由で送ったものです。
6人の人魚姫の尾の色と、王様の尾の金色の宝石を繋げた腕輪です。
2本のチェーンが灰色の真珠で一箇所だけ繋がっているデザイン。
でも、成長後の梓の美しさには叶わないでしょうね(笑)。
誤字脱字ありましたら、ご報告下さい。
無断転用はしないで下さい。
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テーマ : おおきく振りかぶって - ジャンル : アニメ・コミック

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