遠く離れて、心近く。(鰤日一パラレル)

※この話は「ねぇ、だから。」の続編です。
まだ読んでない方は、そちらを先に読む事をオススメします。
また、ここでの一護と冬獅郎は転生しているという設定です。
(恋次も転生していますが、記憶はありません。)
冬獅郎・・・生徒会長兼剣道部副部長。
一護・・・転校生。剣道で全国一位を取った経験あり。
恋次・・・冬獅郎の友人。小学生時代からの腐れ縁。剣道部部長。
外見はそのままで。
そんな設定でよろしければ、つづきからどうぞ。


いつの頃からか、繰り返し夢に見る風景がある。
しくしくと降り注ぐ涙の様な雨の中、迷子の子どもみたいに途方に暮れた青年が独り泣いている。
その髪は、雨に濡れた所為で少し沈んだ、太陽の色。
自分は、その青年の前で、只、立ち竦んでいる。
何か言わねばと、なぜか焦りながら、その唇は固く結ばれて言葉を発することができないでいた。
そうしているうちに、泣いていた青年の口から別れの言葉が発せられる。
行かないで。そう言いたかったが、その時の自分には、青年を引き止めるだけの勇気も理由も、そしてその力もなかった。
離れていく愛しい嘗(かつ)ての恋人に、自分は小さな、それこそ雨の音に掻き消されてしまうような声で、大事な、とても大事な約束を一つだけした。
「約束する。いつか、必ず果たす。だから、それまで、待っていてくれ。―――・・・。」
そこで、いつも自分は目が覚めてしまう。
最後に呼んでいたのは、多分、青年の名前なのだろう。
しかし、彼は、その声をどうしても聞き取ることができない。
聞こえているはずなのに、聴こえない。
それが悔しかった。
そして、目が覚めると同時に霧散してしまう約束の内容。
約束したはずなのに。
とても大切なことのはずなのに、それを冬獅郎はどうしても思い出すことができないでいた。
脳裏にはなぜか、赤い見事な椿の花が浮かんでいた。

遠く離れて、近く。

彼の名前は、日番谷冬獅郎。
東洋系では決して出ない青銀色の髪と紺碧の瞳を持ち、幼いながらもひどく整った顔立ちをした、16歳の健全な男子高校生である。
「おーい!日番谷ぁ!!ニュース、ニュース!!」
その冬獅郎が、朝、登校してくると、小学校からの腐れ縁である阿散井恋次が、廊下の向こうから走ってくるのが目に入った。
「阿散井。廊下は走るな。」
「いいじゃねぇかよ。気にすんな。ンな事よりも、日番谷。ビッグニュースだぜ!」
「なんだ。」
冬獅郎の忠告も、恋次には効かない様である。
「聞いて驚け。転校生だ。」
「ほぅ・・・。珍しいな。この時期に転校生か。で?」
それだけで恋次があんなに大騒ぎする筈がない。
こいつはこう見えて、意外にしっかりした奴だ。本人に言うと、多分、『意外って言うのは余計だ』と言われるであろうが。
それだけは、前世から変わらない。
「さっすが、日番谷君。勘が鋭い。伊達に1年で生徒会長をしてないな。」
「それはいい。サッサと本題を言え。」
「へいへいっと。実はな、その転校生、あいつだ。」
「・・・あいつ?」
「おう。去年の全国大会、高校生以下の部で一位だった奴だ。」
それはすごい。
昨年の剣道大会といえば、冬獅郎も参加したが、準々決勝で相手の反則により怪我を負い、決勝まで行けなかった、悔いの残る戦いだった。
後日、病室に見舞いに来た恋次の話によれば、優勝した少年は、試合では圧倒的とまではいかないながらも、危な気のない戦いをし、その太刀筋は、それは綺麗なものだったらしい。
「早速、剣道部に勧誘しようぜ♪」
恋次は嬉しそうにそう言って、朝のHRが始まる前の教室に入っていった。

席に着き、しばらくすると、担任がオレンジ色の髪をした少年を引き連れて扉を開けて、教室に入ってきた。
喧騒としていた教室内が不自然なほどに静まり返る。
「はーい、静かに。もう知っている奴も居ると思うが、今日からこのクラスの一員になる転校生を紹介する。黒崎、教壇に上がって簡単でいいから自己紹介しな。」
「あ、はい。えっと、はじめまして。今日からこちらのクラスでお世話になります。黒崎一護と言います。慣れないことなどでご迷惑お掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」
季節はずれの転校生・黒崎一護は、そう言って自己紹介をすると、人好きするような笑顔を浮かべてお辞儀をした。
顔を上げた一護は、くるりと教室の中を一瞥すると、教室の後ろの方の席に座る冬獅郎と目が合い、咄嗟に笑みを浮かべた。
その一護の所作に、当の冬獅郎は表面上は冷静に返しながら、内心では相当焦っていた。
一護は、あの夢の中の『彼』と瓜二つの容姿をしていた。
『彼』がもう少し若かったら、今の一護と見分けが付かないだろう。
一瞬だけ、赤い椿の花が見えた気がした。

その日の昼休み。
転校生というだけで、一護に話しかけるクラスメイトを横目に、冬獅郎はいつものように屋上に来ていた。
空はどんよりとした曇り空。まるで、あの夢の中で見た空のようだと、冬獅郎は内心で苦笑をもらした。
そして思い出したように、購買部で買ってきたカツサンドに噛り付く。
味わうというよりは、ただ咀嚼しながら、冬獅郎は前の記憶を思い出していた。
冬獅郎は、物心付く頃から前世での記憶を持っている。
それは、幼いころに遭った事故で瀕死までいったことに関係しているのかもしれないが、記憶自体は事故の後遺症による幻想ではなく、正しく在った事と認識している。
“死神”としての記憶。
それは、今の冬獅郎を形作る確かな欠片の一つであった。
「・・・黒崎一護か。」
冬獅郎は、いちごミルクを飲みながら、誰ともなく呟いた。
冬獅郎が、例の不思議な夢を見だしたのは、彼に前世の記憶が現れる前のことである。
だから、夢と記憶は関係ないかもしれない。
しかし、如何にも腑に落ちない。
記憶の中に『黒崎一護』という人物の名前は有る。しかし、『黒崎一護』その人の記憶は無い。
これはどういうことだろうか。
夢の中の『彼』が『黒崎一護』だとしたら、記憶の中の『黒崎一護』が名前だけしか居ない理由が解明されるかもしれない。
それに、あの約束の内容と、『彼』の名前も。

そんなことを考えていると、金属製の扉が開く高音の音がした。
屋上のドアを見ると、そこには、先程まで冬獅郎の中を支配していた、一護の姿があった。
「・・・あ。」
一護が冬獅郎に気づき、どこか気の抜けた声を発した。
「えっと、ごめん。邪魔した・・・よな。」
そう言って、一護は屋上を後にしようとした。
「黒崎。」
それを、冬獅郎は何気なしに引き止めた。
別に他意はない・・・はずである。多分。
「気にする必要は無い。ここにいろ。」
冬獅郎の物言いに、一護は落ち着かない様子ながらも、ありがとう、と感謝の意を示した。
そして、冬獅郎の傍まで歩いてくると、
「隣、良いか?」
と言って、そのまま、冬獅郎の左側に腰を下ろした。
「冬獅郎って、いつも此処に居るのか?」
「へ?・・・あ、ああ。そうだ。」
一護の言葉に、冬獅郎は暫し声を失った。
(こいつが呼ぶ、俺の名に覚えがあるような・・・。)
どこか泣きたくなる様な切ない響きが在る。
「そうか。ここが冬獅郎の場所なんだな。」
空を見上げて、嬉しそうに一護が笑った。
「・・・黒崎。」
その一護の笑顔が、儚くて、とても悲しそうで。
冬獅郎は、思わず一護の名前を呼んでしまった。
その声に、一護は冬獅郎に視線を戻すと、屋上のコンクリートから腰を上げた。
「俺、もう行くな。・・・邪魔して悪かったな。」
そう言って、出口に向かって歩いていく。
その後姿に、夢の中の『彼』の姿が微かに重なる。
「そうだ。冬獅郎、『椿』の花って好きか?」
「は?」
冬獅郎に背を向けたまま、一護が問うた。
「いや、別に嫌いという訳ではないが・・・。そういうお前は好きなのか、椿が?」
「ああ。鮮やかで、赤くて。それに、あの散り方が潔くてさ。俺、椿が好きなんだ。」
一護の言葉に、誰かの声が重なる。

『花。なにが好きなんだ?』
『俺は、そうだな~、『椿』かな。』
『『椿』…か?』
『おう。鮮やかだし、赤くて綺麗だろ。…それに、あの散り方。綺麗に内に散るところが、潔くて好きなんだ。』
『そうか?』

冬獅郎の中で、記憶の鍵が開けられた。
思い出した。
自分がどんな約束をしたのか。そして、『黒崎一護』が自分にとってどれ程大切な人だったかを。

「じゃあ、またな。」
冬獅郎が呆然としていることにも気が付かず、一護はそう言うと屋上から去っていった。
「・・・ああ、一護。確かに『また』だ。これでやっと、約束が果たせる。」
時は廻る。
別れた嘗ての恋人たちは、こうして再び回り逢える。
身体は遠く離れてしまっても、魂は近くに在る。

『来世では必ず、同じ時代に生まれる。そして、必ず、お前を見つける。約束する。いつか、必ず果たす。だから、それまで、待っていてくれ。一護。・・・俺たちは、来世でも必ず回り逢えるから!!』
さあ、始めよう。
物語は、此処から創められる。

おわり。


あとがき、というか言い訳。
前回の「ねぇ、だから。」を書いた後、どうしたらこの2人が幸せになれるのかを、自分なりに考えた結果、このような結果になりました。
一護と冬獅郎(人間と死神ですね)は、そのままの世界では、あまりにお互いの立場が違いすぎて、辛いと思い、ならば『同じ世界』で生きればいいという結論に達しました。
実は、この話の後日談として、もう一つ話があるのですが、ハッピーエンドにするべきか、失恋エンドにするべきかかなり悩んでいます。
ああ、どうしよう(笑)。
ってか、相変わらず、文才無いな~(汗)。

無断転用などはおやめください。
感想お待ちしておりますVv
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テーマ : BLEACH - ジャンル : アニメ・コミック

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