一の葉 (BLEACH 日一小説)

何のことはない。
ただ単に名が綺麗だと言われただけ。
日常に散乱する常套句の一つだ。
言った本人も、そうとしか思ってないだろう。
ただ、名の響きが気に入っただけ。
それでも。
それでも、貴方に言われた言葉というだけで、こんなにも心が躍る。

一の葉

「黒崎。お前の“一護”という響は綺麗だな。」
久しぶりに来た尸魂界で、偶然日番谷に会い、そのまま十番隊隊舎でお茶と茶菓子を貰うことになった。
その、和やかな雰囲気の中で言った一言だった。
思えば、日番谷が俺の名前を呼んだのを聞いたのは、これが初めてだった。
「えっ…そっそうか?」
思わず上ずってしまった声。
その声に、一気に恥ずかしくなってしまった。
日番谷は、赤くなってしまった俺の顔を、その美しい翡翠の瞳でじっと見つめている。
その表情が、心なしか嬉々としていたように感じたが、それは多分、俺の錯覚だろう。
日番谷の視線に耐え切れず、俺は目を逸らした。
「俺は、日番谷の“冬獅郎”って名前の方が綺麗だと思う。その…日番谷に…似合ってて、かっこいいし。…好きだ。」
そこまで言って、ハッとした。
慌てて、視線を日番谷に戻す。
そこには、驚いた顔の彼。
それはそうだろう。
例え名前であろうと、何も想っていない同性から“好きだ”などと言われたら、気持ちが悪いだけだ。
日番谷は、…俺と違って相手に恋愛感情を抱いてはいないのだから。
「あ、きっ今日は、もう帰るな!変なこと言っちゃって悪かった。忘れてくれ!じゃあな、日番谷!」
俺は、そう言うと、一目散に十番隊隊長室を後にした。


もう日番谷には会えない。
彼は、今日のことで、俺に嫌悪感を抱くだろう。
同性を好きになる奴だと。
そう思うと、自然と涙が溢れてきた。
「…冬獅郎」
誰もいない自分の部屋で、俺は膝を抱えて想い人の名を呼んだ。
此処ならば誰にも聞こえない。
此処ならば彼には聞こえない。
「ずっと、好き、だったのに」
「奇遇だな。俺もだ。」
誰も応えないはずの告白に声が返った。
顔を上げると、そこには満月を背にして立つ想い人。
「…日番谷?」
「それ以外に何に見える。」
いる筈のない彼が、今、自分の目の前にいる。
それに、さっきの応えは。
「まったく。人の話はしっかり最後まで聞け。一世一代の告白をしようとした矢先、いきなり逃げ出すとは。」
「…へ?」
告白?
誰が、誰に?
「黒崎一護。俺は、お前が好きだ。」
綺麗なハスキーヴォイスが聞こえた。
すきだ。
誰が、誰を?
好きだ。
日番谷が、俺を!?
「ええっ!?」
「何をそんなに驚いてやがる。」
「え、だって、日番谷、俺が好きって言ったとき、驚いてて…!」
「ああ。まさか、お前から告白してくるとは思ってなかったからな。」
だが、そのあと、俺もだと言おうとしたら、お前に逃げられた。
そう言って、彼は、その綺麗な顔に苦笑を浮かべた。
「でも、日番谷!」
「冬獅郎だ。」
「へ?」
「冬獅郎だ。一護。」
「っつ!!」
彼の、俺の好きな音が俺の名を造る。
「一護。」
「…と、冬獅郎」
彼が、笑った。
それは、俺が見た中で、一番の笑顔だった。
「改めて言う。俺は、お前が好きだ、一護。俺と付き合ってくれるか?」
そう言って彼は、俺に手を差し伸べた。
もう、迷うことはない。
俺はその手を取った。
「もちろん。俺も…冬獅郎が好きだ。」
それを聞いた彼は、握った手ごと俺を引っ張り、その腕の中に収めた。
慌てて抜け出そうとすると、俺を呼ぶ彼の声が聞こえた。
顔を向けると、真剣な表情の彼がいた。
そこで彼の考えていることに気が付いた俺は、ゆっくりと目を閉じた。
そして、唇に感じる彼の体温。
こうして、俺と冬獅郎は晴れて恋人同士になったのである。

おわり。


ぎゃ~!!
初・鰤小説だよ!!
しかも、かなりへっぴり。
一護も日番谷隊長もまったくの別人じゃ!!
こんなんで良いんか、俺。
一護視点で、日番谷隊長と恋人同士になるまでです。

いないと思いますが、この文章の無断転用などはやめてくださいね~。
では。  神流木貴皇


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